第15集

レポート

投稿

戻る

震え

レンから渡された装置…タイムマシンは想像より遥かに小さく、
首輪のように付けるだけで現在と過去、未来を行き来できるようになった。
レンが言うには転送装置は別の場所にあり、
この首輪からデータを送信し、それを受けた転送装置が首輪に触れているものを
首輪ごと別の時間へ送り届けるシステムらしい。
時間移動の原理は、ボミオスとピリオムを2:3の割合で融合させ、
そこにスライムベスの棲み家から採取できるアストロン素粒子を・・・と、
このへんは長くなるので省略した。



「時間移動というからもっと時間がかかるのかと思ったが、
思ったよりずっと早く着いたな…」

Sクラスの隊員たちは、未来に到着した。
そこは何故か空は緑色に染まり、陸は青色に染まっていた。

「それは体感する時間を縮めただけだよ。
皆は5秒程度にしか感じないけど、実際は30秒くらいは経ってるのさ。」

ゆっくりと歩きながら、レンはさっきラスクールの漏らした言葉に答えた。

「ふーん・・・で、敵はどこだ?」
「俺も敵を感じないぞ・・・ラスクールはどうだ?」
「ここに魔物はいないんじゃないのか?」

ノレカが辺りを見回しながら喋り、節穴がそれに続いた。
五感が鋭く研ぎ澄まされたラスクールが感じないのだから、
やはりここに魔物はいないのだろう。

「魔物ならもうちょっと先だ。」
「じゃ、ちょっくら倒しながら質問タイムにするとしましょうか」







「…なあ、魔王城ってのはどれだけ遠いんだよ?」

どれほど歩いただろうか。
汗だくになった節穴が、口から不満げな言葉を漏らす。
一人が不満を漏らすと、皆がそれに続く。傍若無人な人間関係とはそういうものだ。
彼らも例外ではなく、次々に不満を口にした。

「お前、本当にこの世界に来たことあるのか?」
「無式がいないと道が分からないとでも言うのか?」

溜まっていたストレスを、この場で発散してしまおうとする二人。
レンに淡々と疑問を投げつける。

「…………」

が、レンは全く動じなかった。
何も聞こえていないようにも見えた。

「お、おい……レン?」
「…………」

レンはふと立ち止まり、手を額に当てた。止まらない、震えを抑えるために。
……だが、震えは一向に治まることを知らない。
大量に流れる汗のひとつが目に入ったが、彼は瞬きさえすることなく。
その汗は、そのまま涙となって流れた。

「うわああああああああああああああああああ!!!!」

レンは、いきなり走り出した。
あまりに急な事だったので、他の三人は、目を丸くして見ていることしかできなかった。

「レ、レン…?」
「レン!どうしたんだ!レェェェン!!!!」


続く

見るな!ラスクール

「レンのやつ、どうしちまったんだろう」
「何か、ヤバいことがあったんだろ…」

レンは消えてしまった。時間移動を行ったのだ。

「ふーん、ヤバいことになってるってのに、俺たちを置いていったってわけか」

ラスクールが、近くにあった石に腰掛けながら喋る。

「全く、状況説明もろくにしないで行っちまうとはな。
時間移動装置は回収されてないんだ、帰ってもいいんじゃないのか?」

彼は首輪を触り、その独特な感触に顔をしかめた。

「大体、この形状が嫌だね。俺たちは犬じゃねえんだ」
「ラスクール、そう言ってても始まらない。
とりあえずはレンの気付いた『ヤバいこと』が何かを探そうとしようか」

ラスクールの吐いた唾を踏みつけ、ノレカが近づく。

「俺達が探しても、何も…」
「うわああああっ!!なっ……何だこれは…!?」

ラスクールの小さな反論を、節穴の大きな叫びが掻き消した。

「おいどうした……こ、これは…!?」

節穴の元へ駆け寄ったノレカは、何かを見て言葉を失った。
ラスクールの興味と視線は、一気にそこへ集中した。

「おい、何があるってんだよ?」

立ち上がり、自分も何があるのか確かめようと走り出す。
が、それを全力で阻止する者がいた。

「お、おい!?何だよノレカ!」
「ラスクール……」
「は、離せ、離せって節穴!!」
「……悪い、ラスクール」

ラスクールは混乱していた。
二人とも、何をそんなに恐れているのだ。
幾多もの危機を乗り越えてきた、Sクラス隊員ではないか。
死すら恐れぬ彼らが、ここまで恐れるものとは…!?

が、彼にそれを考える時間は無かった。

「ふ、節穴…何を……」





「魂の封印を施した。俺が封印を解くか、死なない限りは
奴が目覚めることはないぜ。死んではいない、ちょっと眠っているだけだ」

そう言うと節穴はメラをラスクールに放つ。
メラの呪文により、ボールほどのサイズの火の玉が出現する。
節穴はその火の玉を片手で持ち、投球する。
火の玉は加速すると同時に大きくなり、キャベツほどの大きさになる。
そして一直線に対象―ラスクール―を襲う。

しかしその炎はラスクールを傷つけることはない。
一瞬だが光の壁が見えると同時に、炎は節穴の元へと戻ってきた。
炎は更に加速し、節穴の全身を包み込むほどの大きさになった。
―――メラゾーマだ。

メラゾーマの火球は加速を続けていたが、
ズボンのポケットに手を突っ込んだままの節穴の目の前で止まる。

「…とまあ、マホカンタ状態とアストロン状態の二重の守りだ。
これなら魔物にやられることもない。」

節穴はメラゾーマの炎を放置したまま会話する。

「…しかし、あんなものを見ちまうとはな」
「……レンが恐れおののいたのも、これのせいなのか?」
「いや、レンはそこまで軟弱じゃないだろう。
この未来がどれほどの惨劇か俺達より知っていたし、
あの動揺の仕方は尋常じゃなかった。もっと恐ろしいものがあるんだろう」

ノレカと節穴の会話は、淡々と続けられた。

「…何にせよ、早くレンか無式に色々聞かないとな…」

ノレカは眉間を押さえ目を閉じた。
色々と考え込んでいるようだ。

「…ノレカ。考えるのは後だ。早くどちらかに接触しなければ…」

節穴がポケットから片方の手を出し、
人差し指を軽く動かすと火球は高く上空に上がり、
分裂したかと思うと四方八方に飛んでいく。
それぞれの火球が落ちた場所から、急速に業火が燃え盛り広がる…

"メラゾーマ"を、"ベギラゴン"へと変えたのだ。

「そのためには、こいつらを片付けなくちゃあな。」

ベギラゴンで辺りが照らされると、
ノレカたちを取り囲んだ魔物の軍勢の姿があらわになった。


続く

通信

「……チルカル。あいつは無事か?」

空を闇が支配する世界で、男の声が響く。

『マ、マスタッ!?無事だったんスか!?』

男の手には、通信機が握られていた。

「落ち着け、チルカル…俺は過去から来た方だ……」
『そ、そうでしたか…』

通信機の向こう側の声が、落胆する。

『あの人なら…無事ッスよ。しかし、こちらの世界のマスタは…』
「そうか……この世界でも、あいつは無事か…
前に見た世界とまるで違っていたから心配したが…」

こちらの世界。

それは、何を意味する言葉なのだろうか。

「…この世界での、俺の死因を教えてはくれないか?
参考にするとしよう」

自分で自分の死因を聞く。
普通であれば絶対にすることのない質問を、
彼は慣れた口調で訪ねる。

「俺が死ぬ程強い魔物の出現か?」
『…マスタより、強い魔物なんていないッスよ……』

チルカルと呼ばれた、通信機の向こうの相手の声。
途切れ途切れで、時々鼻をすする音が聞こえてくる。

「泣くなチルカル。泣くんじゃない。」
『いや…こんな形になっても、マスタと話せるとは思っていなかったッスから…』
「………そうか。」

……無式とチルカルの会話は、ここで止まった。
その無言の時間は、途方もなく長く感じられた…

『……マスタ、こっちに来てくれないッスかっ…!!』

チルカルは、小さく叫んだ。

「…チルカル…俺は、俺の死因を聞いてるんだ。
それと、魔王と軍勢がどうなっているのかも知りたい」

無式はそう言うと、足元まで落ちていた視線を上げ、
鞘から抜いた剣を一振りした。

自分の後ろで何かの倒れる音がしたのを聞いた彼は、
それを確かめることなく剣を鞘に収め、会話を続ける。

「不死身だった魔物が、その能力を無くしている…
チルカル、教えてくれ!魔王は…魔王ベデューはどうなった!?」

無式は、無意識のうちに通信機を強く握り締めていた。
声に焦りの色が伺える。
彼は更に続けようとしたが、次に聞いた声で……全ての言葉を飲み込んだ。






「そうか…。そうか…だが、俺の世界のあいつが……
…………そ、そうなのか!?なら…俺は…俺は……ッ!!」

無式の背中は、驚くほど汗で濡れていた。
通信機は、もっと、もっと強く握り締められる。
そして次第に、彼の目には涙が溜まっていった。

…次の瞬間。

「ルカァァァアアアア!!!!」

無式のルカの右頬を、拳で強打する者があった。

「…ぐっ!?お、お前…!!」
「無式さんよ、いつものお前なら今のは止まって見えたはずだぜ…ッ!!」

殴られ地面へと倒れこんだ無式に、声を荒げる者があった。

「……レン!!」
「目ェ覚ませ無式!!お前の嫁さんはそいつじゃねぇぜ!!」
「何ィ…!?」

無式を殴った男。
それは、道中に魔物の軍勢に襲われたのだろう、
返り血で真っ赤に染まったレンの姿があった。

俺達の未来を勝ち取るためだ!!

「お前とチルカルとやらの通信は傍受して聞いてたぜ…ッ!
お涙頂戴させるじゃねえか…!!」

無式は立ち上がり、鞘に手を伸ばす。
が、それに対しレンは無防備な状態で話し続ける。

「あと彼女との通信も聞いてやってたぜ…?
内容を話してやろうか?魔王は死にました、ルカさんの命と引き換えに…」
「クッ、レン、貴様…!!」

無式は剣を抜き、レンに向かって一振りする。
無式の愛用する剣は特殊な形状であり、弧を描きながらレンに襲い掛かる。
しかしレンは横に跳ぶことで、それを軽々と避ける。

「ハハハハハハハッ!無式ィ!!全然当たらないぞ!五感を失ったか!?」
「くっ…何故だ!?何故かすりもしない!!」
「それはなぁ、お前の心が泣いてるからさ……!!」
「どういう意味だ!!」

無式は怒りに身を任せもう一振りする。
彼の剣は生きているかのようにレン目掛け躍動するが、
レンはまたしても軽々とこれを避ける。

「彼女との通信の続きを言ってやろうか!
ルカさんは自分の命を全てMPに変換することで、魔王を消滅させたのです…だとよ!
こいつはお笑いだ!更に続きを言ってやろうか無式!!
しかしこの方法が成功する確率は限りなく0%に近く、
この方法を試して魔王に勝てたのは私達だけ、他のパラレルワールドではどこも駄目でした…
まあ、要約するとこんな感じだな!こいつはとんでもない大嘘付きだ!!」

無式は腕を振る。その度、剣は滑らかにレンの身体を切り裂こうとするが、
レンはことごとくそれを回避していく。

「そろそろ剣を振る手を止めたらどうだ!?
…彼女はお前に死なれて寂しかったと、そう言っていたなあ!!
いやあ感動したぜ?ハハハハハハハッ!!」
「貴様ぁぁああ!!俺を怒らせて何がしたい!!」

無式の剣を振るう腕が、どんどん大振りになっていく。
剣は更に激しくレンの身体を貫こうとするが、またしてもそれは宙を裂くだけで終わる。

「…だから彼女はお前とずっと一緒に居てほしい、とか言ってたな!
そしてお前は、それを否定しなかった…いやあ感動するね。
俺達の住んでた世界の皆を見捨てるなんて…見損なったぜ無式!」

レンは人差し指で無式を指し、こう言い放った。

「お前の話してた彼女は魔物の化けた姿だ!!
そしてお前の守るべき者は、お前の住む世界にいるはずだ…!!
お前の心が泣いているのは、それをお前は知っているからだ!!
この未来に来たのはッ!この未来を守るためじゃない…俺達の未来を勝ち取るためだ!!
そうだろう……無式のルカ!!超級モンスターマスターさんよォ!!」

レンの指先から、凍てつく波動がほとばしる!!

「……ハッ!?お、俺は…」

無式は剣を振るう手を止め、目を擦った。
そして、殴られた時に落とした通信機を拾い上げ、声を聞いてみる。

「…こ、これは…あいつの声じゃない…似てるが、違う!!」
「今頃気付いたか…無式……お前の冷静さがどんどん欠いていったときに分かったが…
お前はメダパニとマヌーサ、更にラリホーとフールの4段重ねで呪文を受けていたんだ…
メダパニかマヌーサのどちらか片方だけでも普通は頭がクルクルパーになっちまうんだ、
それを両方受けてしかもラリホーの強烈な睡魔に加え、フールという俺達の知らなかった
思考能力を低下させる呪文…お前ほどの人間でも惑わされたな。
敵は万が一の場合も考えて、ルカニとダウン…攻撃力を下げる呪文までかけやがった。
しかし、そんな状態でも並の戦士以上の身体能力と思考能力…流石だぜ」
「慰めはやめろ……そんな低級な呪文にかかったと思うだけで虫唾が走る」

機械の壊れる音。無式が通信機を握り潰したのだ。

「メダパニやマヌーサなどの呪文にかかっていた…そんなのは言い訳にならない…
マダンテは散々他のパラレルワールドの奴らが試して、例外なく吸収されてしまったことすら
思い出せなかったとはな…」

無式の魔法力が、枯れた木々を揺らし、真っ暗な空に浮かぶ雲を動かし、乾ききった地面を揺らした。

「ま、それは仕方ないさ…」
「ところで、あいつらはどうした?」
「………あっ…」

すっかり忘れていたのだろう、
レンの顔はひきつった笑顔へとみるみる変わっていくのだった。

節穴VSきりさきピエロ



暗雲が空を覆いつくし、木々は枯れ、
地面に潤いは無く。

「ドラキー、悪いがあいつらを探してくれないか」

風が撫でるものといえば、岩と荒れた地面のみ。

「マスタ!フタリノセイメイハンノウヲカンチシマシタ!」

生物にとって恵みだった雨。今では、人の死体を黒く染め上げる。

「2時の方向か。全く、レンの奴。置いてくるとはな」

この、何もかも死滅した世界。

「耳が痛いぜ。敵に囲まれてなければいいが…!」

その荒廃した大地を、走る二つの影があった…無式とレンである。







きりさきピエロ―ピエロのような衣服を身にまとい、
両手の凶器で襲いかかってくる一つ目の魔物―の首が飛んだ。
それと同時に、一匹のスライムナイトが自身の剣を鞘に収める。

「おい節穴。全然手ごたえがないぞ?本当に――」

不死身なんだろうな、と言おうとして彼
―スライムに跨り鎧に身を包んだ戦士、ピエール―
は目の前の光景に閉口した。
首の無いきりさきピエロが、ナイフをこちらへ投げてくるのだ。
機敏な動きであり、ナイフも一筋に、正確にピエールへと向かってくる。

「首が無い状態で動くくらいは予想もついたが、
視覚も聴覚も無いのにこの平衡感覚と狙いの正確さとはな…うぐッ!?」

ナイフは器用にピエールの鎧の隙間に入り込み、彼の肉体を傷つけた。
一本ではない、次々と投げられる。
そして、その全てがピエールの肉を、骨を、傷つけていく。
ピエールはその場にうずくまる。節穴の耳にはうめき声が聞こえたが、
彼はそれを無視してきりさきピエロへと足を進めていく。

「ピエール、こいつが最後の敵だと油断したな?
だがこいつらは偵察だ。すぐ俺達を殺そうと増援が来る。
剣を鞘に仕舞ったのは間違いだったな。それに…」

ゆっくりと歩みを進めながら、節穴は喋り続ける。

「首が無くても動くのを想定できていたと言うなら
尚更剣は仕舞うべきじゃない。武器が命綱とは言わないがな。」

節穴は袋からそっと兜を取り出し、それを被る。
芸術的な装飾が施され、全体がほのかに青く静かな光で包まれている。
その光は見る者を惹きつける美しさと優しさがあると共に、
何故か見てはいけないような、禍々しさ、恐ろしさもかね揃えていた。

「…ふッ……ッ!!…ガ…ハッ!ゴフッ!!」

節穴に何かを言おうとしたピエールだったが、
吐血してしまうことで言葉は発せられなかった。

「…それにしても、話が違うな……不死身なんじゃあなかったのか?
未来の魔物たちは。こんなにあっさり倒せるなら、
家でミカンでも食いながらアニメでも見てるんだったぜ。
何、読んでるんだ?…面白い?……ユニーク。」

血まみれのピエールをあっさりと無視する節穴。
何かの台詞だろうか、一人芝居までして自分の世界に入り込んでいる。

「お前も油断しすぎだと思うぞ」

おかげでゾーマに忠告されている。

「ピエールほどじゃないさ」

節穴はゆっくりではあるものの確実にきりさきピエロに近づいていく。
きりさきピエロは相変わらず首の無い状態のまま節穴の方へ身体の向きを変え、
今度は腰にぶら下げた短剣を投げつけてきた。
それは空を裂き、次に節穴の頭を貫通する筈であったが
青白い光を放つ兜に阻止される。
短剣は地面に落ち、それから節穴の靴に踏まれる。

「いい短剣だな、少し借りるぞ」

節穴は短剣を拾い上げ、口で効果音を出しながら敵を切りつける。
いきなり高く飛び上がり、落下しながら剣を振るなど、
誰がどう見ても遊んでいる光景だ。

「凄ぇ…あの爺さん、落ちながら戦ってる」




きりさきピエロは力尽き地面に倒れ、
節穴のギガデインにより焼き尽くされた。

「…さて。戦闘部隊が来るのはいつかな。」

節穴はそう言いながら携帯を開いたが、
ただ黒い画面に自分の顔が映るだけなのでそれを投げ捨てると、
その場に寝転んだ。

「マスター、ノレカサンヲ助ケナクテ良イノデスカ?」
「大丈夫、大丈夫。あいつはそんなヤワじゃないさ。
それよりロビン、お前の身体、プレステ2ができるよう改造したよな」
「コントローラーガナイノデデキマセンヨ」

ロビンの言葉を聴いて、彼は不満そうに寝返りをうつのだった。
ピエールがいつの間にか死んでいるのから目を背けるように。



続く

命を大事に

節穴がきりさきピエロで遊んでいる頃、
ノレカたちは何をしていたのだろうか。
実は、そのときには既にノレカたちは敵を倒し終えて
遊んでいたのである。

「デビルパインの身体に、デュランの腕をつけて〜…
足は何がいいかな?」
「キャタピラー!」
「軍隊ガニ!!」

…なんとも惨い遊びである。
良い子は死体で遊んではいけません。

ノレカとその魔物たちは、この遊びを繰り返していたが、
ノレカは5分程経つと飽きたらしくその場に寝転んだ。

「あー、今頃マルタの皆はどうしてるかな…」

ポツリとノレカが呟く。
すると、死体いじりを続けていた魔物たちが作業を止めた。

…誰も、口を開こうとはしなかった。
長い沈黙。

「…フフッ」

その沈黙を打ち破ったのは、ノレカの小さな笑い声だった。

「忘れてたな…そうだな、ここがマルタだったな。
それに俺たちは未来に来てたんだ…今頃、なんておかしいよな。」

彼は笑った。だが、その表情には、少しの哀愁が感じられるのだった。
彼は続けた。

「…でも。マルタをこんな風にはさせやしない。絶対にな。
無式もレンも、その為にこの荒れ果てた大地で戦ってきたんだ。
魔王の手の中で、必死にもがいているんだ。
あいつらがここに来る理由は、生き残った人のボランティアをするためじゃない、
魔王を倒す方法を見つけ出し、現在に戻り未然に被害を最小限に食い止める…
そんなとこだろう。
そして俺も、彼らと一緒に皆の笑顔を守るんだ!!」




「え?あ、ごめん聞いてなかった」
「何て言ってたんだ?」
「さあ?」
「昼食じゃないかな?」
「それだ!」
「肉!肉!肉!!」

ノレカの力説は、魔物たちには届いてはいなかった……



―数分後



「マルタの皆は、俺が守る!」
「かっこいいぞ!ノレカ!」
「見直した!」
「よし皆、頑張ろうぜ!!」
「オーッ!!」


……そこには、仲間の魔物の死体で腹話術をするノレカの姿があった。



院長「お前、クビね」
ポスト「…は?」

一方、ポストは医者をクビになっていた。

Copyright (C) 2006 喋るホウキ , All rights reserved.
※喋るホウキは学生、いや、学生である前に人間ですので、
更新頻度が落ちることもあります。